
サイトウユウヤMEDIA:(上部)曲木技法、プリント技法、カラースプレー、UVコーティング(下部)木にモルタル、バーニッシュコーティング
YEAR :2021
提出作品の解説
肉筆→プリント→デジタルという大きなメディウム発展の中、プリントは既にレガシー(遺物)となりつつある物質的なメディウムであり、当時に量産可能な技術そのものも示します。しかし映画のポスターや雑誌の切り抜きによって育まれ、興奮を享受した世代において、プリントは量産や複製という一般的な解釈とは無関係に、たしかに人々に本物としての価値を提供していました。たとえ無数に刷られた内の一部を手にしていたとしても、そこから受け取った興奮や想いが本物であるならば、肉筆のような唯一性とは無関係にプリントも本物を語ることができるのではないか。と考え、プリント作品の捉えなおしとして、新たな表現を試みています。本作Drop_15では、規制と監視の隙間をすり抜けながら恰好のスケートスポット(滑る場所)を街路に求めるスケーターの意識をイメージしています。背景に街路マップが薄っすらと敷かれ、実際監視カメラが設置されていた位置をピンドロップし、ブラシストロークをスケーター移動像に重ねています。規制と監視は今後益々カジュアルに我々の生活に浸透していったとしても、その盲点をずる賢くもハックしながら表現の場を獲得しようとするストリートに生きる者のしぶとさを表現しています。
サイトウユウヤは宮城県気仙沼市に生まれ、米国オクラホマ州立セントラルオクラホマ大学を卒業後、現在は横浜を拠点に活動しています。
『曲木』と『プリント』という伝統技法と現代的な素材を組み合わせた作品には、14歳からはじめたスケートボードの動的な感性と、日々滑り抜けていた都市への意識が投影されています。都市を紐解くことが人間の本質を露わにするカギであると考え、作品を展開しています。