
千葉尋MEDIA:葛、アクリル板、レジン / クロログラフ(Chlorophyll print)、レジンクラフト
YEAR :2021
提出作品の解説
クロログラフという、葉に写真を焼き付ける技法を使用しています。感光材やインクは使わず、葉緑体の色素を脱色して写真を焼き、標本として保存します。はじめて実験が成功した時、強烈な美的快感と懐旧の念を抱きました。そのため、懐古感情の探求をコンセプトとして制作しています。これまでの制作の中で、「懐かしい現在」という一見矛盾する語が生まれたことから、今度は「懐かしい未来」という言葉から作品が作れるか、2年ほど考えていました。行き着いた回答は「過去の夢」です。本作品はその1作目です。子供の頃に思い描いた、自分の能力を無視した期待。空中散歩、小人化、超高所に登ることなど、憧憬とともに想起される、物語や空想、夢の記憶です。入り口は違えど、発想は結果としてシュルレアリスム、デペイズマンに似ました。先人に感謝と敬意を込めて、この1作目は、ルネ・マグリット「 Infinite Gratitude(1963) 」よりモチーフを引用しています。
千葉尋(Hiro CHIBA)
2014年 東京造形大学大学院 造形研究科 修了
大学院修了後の二年間、知見を広めるために海外ボランティア活動に従事。アーティストとして生きることの相対的な豊かさを再確認したが、制作に生きる考えは変わりませんでした。帰国後2017年より作家活動を開始。
手先が器用で図画工作が好でした。
そして好きだから作品を作るという時点で、コンセプト主体のフラットな作品を作ることはできないという思いが、在学期間の大半を占めていました。
しかし美術史上、マルセル・デュシャン、アンディー・ウォーホルなどに外郭を拡張され続けてきた「アート」という概念。
村上隆のスーパーフラットなどにも代表されるように、近年は、アートを価値語としたときに、アートではないと分類されていたものを、アートの土台に再分類することに終始しているように感じます。
そして、アール・ブリュット、超芸術トマソンなど、美術に関係のない制作者(アウトサイダー)と、その制作物をアートにする人物(インサイダー)が別に存在する類のアートと出会ったことで、遊びとしての制作物ですら、アートの土台に乗る可能性を持つことに気付きました。
美術教育を受けていたものの、自身の制作の中でアウトサイダーとインサイダーは常に明確に分かれていました。
以降、このような制作構造を仮に「プレイズム / 遊びとしての芸術」とし、意味の無い実験的遊びから生まれたクロログラフを、インサイダーの視点から言語化し続けています。
■ 略歴
2017年
シェル美術賞展 / 国立新美術館 /六本木
2019年
・The memory of the Chloroplast/ Gallery Byul /韓国
・SAISON PHOTO 2019/ エパウ王立修道院 /フランス
・Future Vision 2019/ Tawar Mall /カタール
・GWANGJU INTERNATIONAL ART FAIR 2019/ KDJコンベンションセンター / 韓国
2020年
美の起原展/ 銀座画廊 美の起原 / 銀座
2021年
・個展 / B-gallery / 池袋
・The 16th TAGBOAT AWARD / 渋谷ヒカリエ / 渋谷
・第10回 FEI PRINT AWARD / FEI ART MUSEUM YOKOHAMA / 横浜
・SICF22/ SPIRAL / 青山
■ 受賞歴
2020年
・金賞 / 第2回TKO国際ミニプリント展 2020
・求龍堂賞 / 第9回 FEI PRINT AWARD
2021年
・IAG奨励賞、シアターアートショップ賞 / IAG awards
・審査員特別賞 小林貴賞/ TAGBOAT INDEPENDENT
他入選多数
■ 助成
2018年
・芸術活動への助成/朝日新聞財団
2019年
・特許出願料援助制度 / 日本弁理士会